《新風青嵐の放談コラム》新緑号

大海と、空の高さと、土の温もりと

「不惑のキレとコク」

 本年不惑…

 十勝の農協青年部は定年を40歳未満にしている単組が多いから、私ぐらいの年齢だとほとんどが引退しています。部長時代に一緒にやってきた仲間や、たまに会う口の悪い友人は「おまえ、まだそんなことやっているのか。」
と冷やかしたりします。
 40歳だと地域にあってはJAの生産部会の部会長や農連の役員、農事組合長などJAの幹部も含めて地域農業の中核を担う年代です。
 もちろん子供がいれば、PTAや社会教育関係の出番も増してきます。
 つまり我と我が家のことばかりを言ってられない、考えられない歳になってきたということですし、農協青年部のステージから観てもう一つ高くて広いステージがそこにあるということなのだと思います。

【支えられていることに感謝】
 たとえば私のような立場の人間であっても40歳にもなろうかという者が、地域貢献の場所にいないことは、(物理的に札幌や、東京に行って留守をするのでしようがないのだけれど…)あまり良く思われていないところが少なからずあるみたいですが、それでも
「ガンバレや!」
といって背中を押されることに、実は最近快感を覚えるようになってきた。
 もちろん自分のためであることはもちろんですが、そんな期待に応えなければならないと強烈な負荷を自身にかけていたりして…(そのストレスがこの体重を維持していると思う時もある。)
 少なくとも送り出してくれる家族や周りの人たちには感謝の言葉が見つかりません。
(道青協の中で新得のタイラさんが、愛妻家であることを知らないものはいないはず…)

【チーム井手参上】
 先日(H17,6,9)、農水省の井手総括審議官ご一行様(チーム井手)が来道して十勝に入り、現地ヒアリングを行うのでJA青年部の関係役員が意見交換会にと、案内をうけました。
 担い手重視の政策転換に対する意見交換と言うことでしたが、品目横断の当該地区でもあるので、かなり重厚な会議です。おそらく、10年前だと考えられないメンバーの中に、青年部に配席をいただくほどになったのを、あえて頼もしくなったと見るか…いずれにしても責任重大です!

 地元開催の会議はホームグランドでもあることから、札幌や大手町の会議よりは遙かに精神的に楽です。結果、当地区以外では許されない様な発言があったことも否定しません。
 意見交換終了後の名刺の交換で
「貴方が、あの平さんですね〜。」
と総括審議官や経営政策課長に言われ、そんなにプレッシャーを与えていたのかと思うと困惑しました。もちろんそんな意図はありませんが、ありのままを見るべき目で見てどう判断されるかだ…とお話ししました。

 懇親会の席で弟分になる地区青協の副会長から
「まだまだ、全然言い足らないでしょう。僕らに気を使いましたか?」
と言われ、また身内の課長から
「今日の平会長の発言は、思ったほどキレがなかったですね。いつもの平節はどうしました?」
と指摘され、思い当たる節があるので結構へこんでしまいました。
その理由…とは?。

【贅肉的言い訳】
理由その1…○○○の顔と声
 事務局から会長就任後、
「会長の発言には重大な影響力がありますので、気を付けて発言して下さい。」
と、言われたことがあります。
 平成16年、農水省の有識者ヒアリングの後段の話です。有識者ヒアリングの私の発言には様々な評価がありましたが、そのことを自身はあまり想定してなかったので、正直“発言の重さ”の反応に少々戸惑いました。
(少なくとも道青協“畑”の副会長の比ではありません。)
 まさに主産地北海道の担い手の顔、声なのかと自覚した次第…ましてや本年は全青協副会長の立場です。

 そんなところに本人の自覚のないまま、制動装置が働いたのかもしれないと思いました。そのへんを大人になったと評価するのか、牙が折れてしまったと嘆くのか、40歳とは難しい年頃です。

理由その2…予習不足
 双方やる気満々…!そんな会議の時はしっかり予習をします。
 色々な基礎資料からやりとりをシミュレーションして、何を発言すべきか…、その会議の主人公たらんことを模索するのです。

 実は私に気を使っていただいたのか、当初青年部からは、十勝地区農青協の役員のみの出席であったので、お客さんのつもりでしたし、平成15年に来道して我が農園の現地視察して以来の、北海道畑作シンパの企画官が随行されるということだったので“あの時は…”の反省会も含めて一献というのが第一の目的だした。

 ところが、農水省の説明が終わり、意見交換が始まってから司会の森本組合長(JA士幌)の 「どなたか意見を求めますが…」
数秒の沈黙のあと、私の視界に入る外野席から一斉にブロックサインが発せられました。
「平がトップバッターなんでしょう…!」
 準備不足とはいかんともしがたいです…
 農業者の格言にも、“段取り八分”というのもあります。せめて発言予定者同士のミッションは手抜かりなくしなければならないと痛感しました。

理由その3…身体の贅肉
 一番の大きな理由が、大腿部の“肉離れ”。
 小学校運動会のPTA種目の出場しての怪我…意見交換前週の日曜日、たった30mそこらのリレー種目でやってしまい、これが思いのほか重症でした。
 2〜3日は安静にといわれ、這いつくばってトラクターに乗りました。家内には大目玉です。あぐらも、正座も、イスに座るのも、トイレも苦痛で脂汗が出ました。

 今では子供に馬鹿にされますが、中学、高校とスポーツ少年でした。
 剣道少年団、バスケット部では主将をつとめ、陸上部とかけもちをして大会に出場しました。(100mは11秒台…信じてもらえないけど…)
 それが、今ではこのていたらく。怪我の痛さより情けなさで心が痛かったです。40歳になると知らずにつく心と身体の贅肉…そのまま放っておくと、わずかな青年の煌めきまでうばってしまう。重大な決意を持って対処することを誓わなければなりません!

 そんなこんな理由がありました。身体の怪我を自身を奮い立たせる材料にもなると、達観視するほど大人物でもありませんし、自身は足らないものだらけです。

 “キレ”と“コク”で勝負する青年の輝きを持った中年、“新得のたいらさん”の明日への戦いは、まだ始まったばかりです。

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