《新風青嵐の放談コラム》永田町の秋号

大海と、空の高さと、土の温もりと

『10.18 自民党基本農政小委員会/意見表明』

【導入】
あらためまして、北海道農協青年部協議会会長の平でございます。また合わせて、本年は全青協副会長をつとめております。
北海道十勝は道東西の玄関口になります新得町で畑作野菜農家をしています。

まずもって、皆様には日頃国政に精されておりますことを、敬意を表しますと共に、一層のご活躍に激励とエールを送るものです。
また本日、このような貴重な機会を与えていただいたことを、たいへん感謝します。
 …とは言え、初めての経験でありますから、完全にお上りさん状態でして、出がけに中学生の子供達に『自民党の会議だったら小泉さんに会えるの?』とかの、レベルです。

【起章】
 そんな状態でありますから、この限りある時間の中を平常心で臨むのは、たいへんな勇気のいることでありまして、このヒグマのようなガタイを精一杯ふるわせまして、責任ある担い手の立場を代表し、意見と、決意の丈を述べさせていただきます。

 おそらくは、この立場になければ本日のこの壇上に立つことはなかったのだろうと考える時、家族や地域の方、盟友の皆さんの多くに背中を押されていることの、改めてその責任の大きさを自覚するものであります。
 特に、平成19年産から導入が予定されております、品目横断的支援政策など政策転換に伴う議論において、時には当事者となり、時には最前列にいてその風を感じる機会が、増えてまいりました。

 先々週も、甘味資源作物の主産県による要請集会において、“ガンバロウー!”の決起をさせていただきましたが、その結果は残念ながら満足のいくものではありませんでした。
 この、豊穣の秋の喜びを国民と分かち合えない不幸と、憤りを通り越した無力感を誰に訴えればいいのでしょうか。真綿で首を絞められ、我々は座して死を待つだけでしょうか?
 これからお話しすることは、まさに現場のうめき声であることを、心に止めて聞いていただきたいと思います。

【意見】
《より努力した生産者》
 意見の一つ目として、
 国内政策において、そのイメージか固まりつつありますが、それでもまだ『直接補償』あるいは『所得補償』という言葉から、なにかこの施策で自身の経営環境が劇的に好転し、バラ色の農業人生が保障されるような錯覚に陥っているようで、現場は混乱しています。
 国政選挙の中でも各党は農業政策に関し政権公約を掲げましたが、主張に整合性が欠けていたり、無責任なものもあったことを見逃すことが出来ません。

 私はこのことについて、
“少なくとも今までと変わることのない生産努力からは、今以上のものを手に入れることはできない”と考えますし、同時に
“施策対象責任を果たし、国民の負託に応えるために自らを律する”事が必要であること正面から受け止め、批判のための批判ではなく自主自立に向け責任ある政策提言を行うことが現場に携わる者の責務であると考えます。

 特に品目横断に見る支援対策が導入されることについて、決して駄農を生み出さず、緊張感のある生産努力を実践してきた産地や、より経営努力より営農努力した生産者こそより報われることが可能な政策転換であるべきだと主張します。
 過去現在と産地や生産者の取り組みに対して正当にアセスメントされた結果として、産地の生産責任や自覚が醸成されていることの評価を正当、公正に判断していただきたい。

《担い手の能力》
 意見の二つ目に、
 本年の組織討議のなかで担い手の要件について『意欲と能力のある主業農家』が基本であるというフレーズに注釈を入れば、“能力”とは例えば、面積要件の未達者が、その地域や町村で高収量農家であったり、あるいは営農技術水準の高い農家であった場合、その能力が正当に評価されなければならないのではないか、という主張であります。

 A農家の耕作面積が10haで、面積要件がクリアされたとして、仮に5中3の収量が400kgだとします。一方B農家が7haの要件未達者が、5中3で600kgだとしたら、B農家の営農技術や経営能力はどの時点で正当に評価されますか?と言うことです。

《制度設計の青写真》
 意見の三つ目として、
 いわゆる、対象品目を耕作する畑作農家自身の立場から、“品目横断”の具体的な制度設計について、輪作農法に配慮した議論の加速度を求めるものです。

 輪作というのはEUの“4圃式”をアレンジし、小麦、豆、馬鈴薯、甜菜を輪番し作付けすることで、耕種農法ではその効率性、生産性、または環境配慮においてもたいへん優れている営農技術であることは、広く世界に認知されていることであります。
 更に付け加えると、輪作はもちろん単年度で完結するものではなく、本年の小麦は次年度の甜菜のために、その甜菜は豆のために、またその豆は馬鈴薯のためにと持続的、発展的に生産資源を継承するものであります。

 したがって、この時期に制度設計の青写真が示されていないと言うことは、営農設計上生産者は大きな不具合と不安を抱えることになることを、私は機会ある毎に発言してきました。つまり、今いまの段階で既に現場では平成19、20年産の準備を粛々としているのです。
 もちろん国際貿易規律の強化に対応するために、国内対策にフライングがあってはならないことは理解できますが、せめて現場の生産者の焦燥感や不安だけでも解消する手だてを講じるのは、制度設計に関わるものの責任であることを強く要望いたします。

【メッセージ】
最後になりました。
 私のうしろには道青協7,500有の盟友がいます。
 皆さんにはこの盟友達の声なき声が聞こえますか?視るべき目をもって感じ、言うべきは言い、やるべきをやる。責任政党としてなさなければならないのは、大局に起ち日本農業のあるべき姿を描く事ではないですか?。

構造改革が加速する中、私達が主張するものは一貫して変わるものではありません。
 現場の人間が、けして故なき不条理、理不尽な思いに合わず、自身の抱いた夢や志が自身の工夫と努力次第で適えられることの出来る…、そんな生産環境を望んでいるのです。ただそれだけであります。

【結び】
 現場の汗がいつの日か報われる事を願い、土塊の農人の魂の叫びを決意に替えまして、私の意見と致します。

 ありがとうございました。

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