《続・新風青嵐の放談コラム》望秋の10月号

土根にはえ、風と生きる

「2006秋・総集編」

 初夏の日照不足の後遺症をひきずりながら収穫の秋へと季節は進みましたが、時折の大雨でさすがに苦労しました。被害にあわれた方にはあらためてお見舞を申し上げるところです。

 そんな秋もいよいよ終盤。
 半ば現役を退くも、参与というユルユルのポジションをいただき、それでも本来ならば、関連事業などを中心にコラムファンや盟友にお繋ぎしなくてはならないと思っていましたがやはりままなりませんでした。
 今月号(しかもまたもやギリ)はそんなことを許してもらいながらの、この“秋”を振り返ってみることにします。

【風たちぬ】9/10
 H11年からの全青協役員経験者が一同に会した『旭川フォーラム』(通称:中原フォーラム)に中原プロダクションからオファーをいただき参加させていただきました。農水省井手官房長の参加というビックサプライズを得て開催されたのは、自身にとってもスーパーサプライズ!
 本来だったら、開催地ホスト役として汗を流さなければならないところだったのでしょうが、前田会長をはじめ上川地区の青年部の皆さんには収穫時期の忙しい中、本当にお世話になりました。
 なにより、僚友中原氏(第26代道青協会長)に
「やはり頼りになるのは平さんだ、思ったとおりにいつも何とかしてくれる、ありがとう!」
には、正直涙がでそうになりました。
 官房長の髪の毛ネタは愛嬌として、実は、データーのはいったいわゆる“裏”がとれているネタを仕込んでいきましたが、タイトなパネルディスカッションの中で披露したことを評したのだと思います。
 それは、食料自給率についての解題部分でした。

「食料自給率については、特に正しく判断できる視点を誘導理論しなくてはいけないと思います。
 例えば、日本の穀物自給率は27%だそうですが、これは世界の主要国中、百二十何番目でなんとお隣の北朝鮮より低いと言われています。これに危機感を持って
『やはり、自給率は上げなければならない!』
と思うのは当然として、では私達はあの北朝鮮の人たちより貧しい食生活をしているでしょうか?あるいはそれを実感できますか?
 必要なのは、そんな数字に惑わされない真に賢い消費行動や意識を持つことで、例えばそれは自給力という観点からアプローチすることも、生産者として必要だと思います。」

 私の前に発言された、森本氏(H11全青協委員長)が、数量ベースや金額ベースの自給率についてお話しされたあとだったので、後段森本氏に
「平くんは相変わらずよく勉強しているな!」
『女性については森本さんほど勉強できていませんが…』(←心のつぶやきつっこみ)
と、誉めていただきおもわず鼻の穴を膨らませてしまいました。
 実は私の性癖のひとつに、先輩達、特に尊敬する目上の方から誉められることに言い知れぬ快感を覚えるというものがありますが、その事が自身のモチベーションを高めてもいるのです。
 中には「平、喰っちゃうからイヤなんだよなぁー。」と、思われる方もいるかもしれませんが、またこうした機会があれば嬉しいと思った秋の競演のヒトコマでした。

【いつもの秋より長くなりそうな…】9/28
 収穫の秋、食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋、読書の秋…。
 色々な秋があるのは、春からの成果の一区切りと、冬に向けた準備の狭間にある季節だからではないでしょうか?
 いよいよ白い奴らが来るのをタイムリミットに、もの悲しいロケーションに心を奪われてしまいそうなのをやっとの思いでこらえても、それでも「秋か…」と哀愁のため息がつい肺腑から漏れてしまいます。
 ため息の深さは今夏の天候不順で、作物達の元気が回復しないままの大苦戦の収穫の秋のせいでもありますが、なにか恋に落ちたようなせつない気持ちは人生の折り返しにいて、もう少し先にあるはずの“ドキドキ”を見いだすことの出来ない焦りの裏返しかもしれません。

 “恋に落ちる”で思い出しましたが、燃え上がるような恋愛も季節が秋風を連れてくる頃、恋人達の熱も冷め文字通り秋止符となるように言われているのは、動物の行動学的見地からいって、日長の変化によるものだといわれています。
 つまり、秋の物悲しい枯れ葉の色など波長の長いオータムカラーが脳下垂体を刺激して、防御機能を強化するホルモンを分泌し、結果、恋愛の様な外側に向けた発散的感情を抑制するというのです。
 ただ、ある恋愛学者は(←そんな学問あるのかね〜?)そんな場合でも、くすぶり続けているカップルは良くも悪くもその恋愛関係を持続し(持続的発展?)、しかも、アブノーマルな関係に陥りやすいのだとか…

 そんなことを考えながら、“巻山晃のオハヨウ北海道”のラジオ出演を終わらせ、約3ヶ月ぶりの上京となった日本農業研究所主催の『日本農業の永続可能性に関する研究会』に講師として招いていただき、著名な大学の教授達を前にして久々の緊張の中、これまた久々に北海道は新得のタイラさんらしく尖りまくってきました。

 講演内容は事前に提示されたテーマを基に今いまの政策議論から十勝畑作、輪作の問題点を照射するというものでしたが、随分楽しい講演にさせていただきました。
 後半の意見交換ではさすが大学の先生だけあって鋭い質問が相次ぎましたが、やはり一番気がかりなのは疲弊する農村の姿でありました。
 本道は過去、産業施策の転換期に大きな犠牲を主要産業に払ってきました。エネルギー転換施策による石炭産業、200海里による漁業、そしてこの次は農業かと…
 農村が枯れかかる事象を地域のセンターコミュニティーを担う学校教育の現場から事例紹介しました。

「もう既に閉校した小学校に通っていた頃、次女は同級生がいませんでした。一つ上の学年も欠学で閉校年は教頭先生が担任で、ある時その次女がお腹が痛いというので学校を休むことになりました。たまたま学校の近くの畑の仕事だったので、小学校に直接出向き『おやすみします。』と教頭先生に報告したのです。その、若くて子供達にも人気のユーモアのある教頭先生はこう言いました。『わかりました、今日は学年閉鎖ですね!』」(一同笑…)

 しかし、これを笑っていられる内はまだ幸せです。…し、農村が死んでしまうからと言って常に眉間にしわを寄せ、ため息ばかりをついていることはできません。それでもそこに住んでいる土着の民は元気に楽しく朗らかに生きていくしかない、生きていきたいのです。
「ではそうするためには、どうすればいいと思いますか?私達研究会の根元的なテーマなのです。」
に、さすがに言葉が詰まってしまって、だいいち、それがわかれば既にどうにかなっているはずで、そんな答があるのなら私が聞きたいぐらい…
 それでも、真摯にこう答えました。

「教育です。親の背中を見て農業って素晴らしいと思う心の教育は、社会教育、生涯学習機能に通じるものでそのものに挺身する全ての方は、自分の故郷に誇りと愛着を持っています。『父さん、俺北海道が好きだから、新得という町が好きだから…』を言わしめる“郷土愛”を育む教育が、その課題を紐解く入り口になると思います。」
 著名な大学の先生達も、やはり熱い血が流れてるのか、うんうん!と大きく何度もうなずくのを見て、なぜか一瞬やはり東京に来てよかったと思いました。

 そんな、東京砂漠に咲く一輪のコスモスに小さな愛を感じた次第…
 時に、読者諸兄はこの秋、何にその“愛”を感じましたか?
 今夏からの恋愛は成就できましたか?それとも、長い秋にほだされ清算してしまったでしょうか?はたまた、危ない関係に陥りそうですか?(だったら、程々にしておきましょう、外泊禁止令が出ますよ。)
 Sプロジェクターとして、青年部事業年度の折り返しに想う秋の“恋愛交差点”です。某杉様の(←杉良太郎のことではない)恋愛成就に皆様の念をどうか送ってあげて下さい。お願いします。

【こんな小春日和の穏やかな日は】10/11
 JA全国大会はこの5月まで自身が担い手代表の議案審議専門委員だったこともあり、杉様に頼み込んでなんとか道青協参加枠を確保していただきました。感謝…
 三年に一度のJA全国大会は自身は2度目の参加です。初めての参加になる道青協役員はその内容はともかく、新幹線か飛行機のお時間か中座する集団を見て不満な様子。

某T副会長:「いつもこんな感じですか?」
某H参与:「まぁーこんな感じよ。」
某T副会長:「いいんですかねー、全国大会がこんなことで…」
某H参与:「しようがないよ、そういうレッスンしてないし、所詮農家のお父さん達わがままばかりのバカボンだもの…。まあ、俺達はそのムスコになるからバカボンボンだけどね…。」
 さらに続けて、
「例えば、主催者が“出席”をとるぐらいのことをやれば少しはまともになるかもよ。」
 さらに、さらに続けて、
「北海道のJA大会なんかもっとひどいよ!でも、もうそろそろ次の段階に脱皮するね。だって青年部の全道大会はちょっとはまともになってきただろう?そういうトレーニングを誘導してきたからね…。」
 さらに、さらに、さらに続けて、
「そういったレッスンを受けた者達がJAの幹部に、理事になりつつあるよ。たぶん変わるとなると、劇的に変化するね、こういうことって…。」
さらに、さらに、さらに、さらに続けて、
「ただ俺も、全道のJA女性部大会に出てなかったら、あんな風にしようとは想わなかっただろうな…、女性部さんは凄いよ!女性は偉大!この業界もいっそジェンダーフリーだな。あっ、反対語をセックスフリーって勘違いしちゃ駄目だよ。ただでエッチができるとか、ニューハーフ型人造人間とか思ってちゃ見識疑われるからね!」
一同:「笑」
…心の声…
某T副会長:「そりゃ、あんただよ!見識以前の問題だよ!」
某S会長:「結局エロネタでおちかよ!」
某N副会長:「やっぱりエロファーマーだ!」

 今年は2年に一度の女性部大会があり、さらに3年に一度の全道JA大会があり、両方に参加する青年部役員は、おそらくはそのみごとなまでのギャップに“バカボンボン”の大会から何とかしなくては!を、痛切に感じ取ることでしょう。
 アームレスリング、怪我しないようにね…

【おめでとう!日本一!北の勇者】10/26
 増刊号の取材がたまたま“その日”だったこともあり、ドキドキのカウントダウンを1行1行心に刻むように綴った政策議論の長稿はその思いが叶ってか、みごとペナントを制してそのチャンピョンフラッグは津軽海峡を越えてきました。
 この快挙に自称世界で一番の北海道野球ファンの一人として秋の夜長を陶酔した次第…
 ついつい、野球談議に花が咲きそうなのは仕方がないとして、もちろん頂上決戦のゲーム内容のしびれたあれやこれも、ビールをまさに浴びるほど飲みながら語りたいところですが『みなまで言うな…』と四十数年来のオールドファンにたしなめられそう…
 もう既に新しい目標に向かって歩き出した選手の視線を温かく見守ってあげるのもファンの仕事です。

 歴史的瞬間に立ち会い多くの道民、野球ファンとその感動を分かちあったことを私達は後世に語り継ぐという役割を有していることに、あらためてこの時代の当事者を思うのです。

 秋の夜長、なぜか人恋しくてたくさんの人たちの笑顔が浮かんでくるのは、やはりたくさんの人たちに愛されていたからなんだと、自分勝手に解釈して、満天の星空にまた、人工衛星を探してみるのです。
 小さい自分を忘れないために…

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