《新・新風青嵐の放談コラム‘07》爽夏湧雲の7月号

森羅の夢に果てるまで

「嫌いだ…なんて言わせない」

【ウサギよ、アマガエルよ、スピカ達よ…その生命、いただきます】
 前号、ウサギの追悼号は一部のファンに「ひっぱられた〜!」などの狙い通りの反応があったり、(ちなみに、“若い彼”とは自身の長男のことで、年上の彼女は迷い犬の“シロ”のこと)お悔やみのレスがあった一方、「道青協HPのたとえ“放談”とはいえふさわしい内容だったのか?」の意見もいただき、反省した次第…
 いずれにしても、ペットの飼い殺し(…ん?いいのか、その表現?…また苦情が…)は飼い主にとってあってはならないこと…そちらも含めて、ただただ反省…

 そして、時はまさに参議院の選挙運動期間…
 グリーンジャケットで来道しアヤノコウジ キミマロに間違われた(ご自身の自虐ネタですよ〜)我が業界の推薦者を応援だー!…と、参集した決起集会以降、なぜかしら北は、特に十勝はエゾ梅雨よろしく低温、曇雨天つづき…
「あのジャケットって…、アマガエル色ですかね…?」
 そんな、声が聞こえてこなくもなく…と、思っているうちに地上にある“スピカ達”は、それらしく色んで来ました。頃合いを見はかるように夏ナツモードの北海道ブルーな青空にはえるハーベストイエローな小麦達の収穫をむかえる季節がすぐそこ…

 そんなときに、小学校時代、妹の担任だった先生が教育局長として当地に赴任され、色々なご縁でお葉書をいただくことに…
「…今後“農の教育、食の教育”のテーマでメッセージを伝えたいと考えております。…お力添えをいただきますよう…」
 に応え、今月号は、そのお返事メールを解題に…

【十勝教育局長様…お忙しいのに…恐縮です】

 先日は“局長ペ−ジ”の『子育てや教育の営みは世代を超えて受け継がれる』のご案内をお葉書でいただき、家内、両親と敬服しながら拝読させていただきました。ありがとうございました。
 文中、「子供と共に“親”も成長できる取り組み…」には、自身も“親”の立場になってあらためて共感するものです。四人の子を持つ者として日々子供達に、そしてたくさんの出会いに育まれているのだな…を実感しています。私の両親も、当時のことを感慨深く思い巡らせていました。

 また、閉校した母校のことを思い返すと楽しかった懐かしい想い出と、何か切ない想いが複雑に交錯します。
 閉校前年夏のPTAの話し合いは連日、連夜…
「そもそも、閉校するべきか否か?」
…に、誰もが誰よりも小規模校の利点を認識しほとんどのものがOBだったり…で、出来るだけ存続したい…が、正直な気持ちでした。しかし、『自分たちの子供はこのままで耐え得るのか?』に、不憫な想いをさせたくない…、というのもまた偽りのない想い…大きく揺れ動くのです…
「体力のあるうちに、僕らの手で幕を閉じよう…それも、受け継いだ者の役目だ…」
「もし、意欲と情熱のある先生がいて子供達がそれに感化されるのだとしたら…今がそうだけど、そんな素晴らしいことはないし、こんな素敵な小学校も他にはないと思う…たとえ小規模校でも…」
 そんなやりとりの中で、地域が学校と関わる手だてとして『生涯学習センター』の導入に積極的で結果として学校と地域の関わりに、ある理想の形を構築するのを先導した白銀校長(当時)が、
「どんなに素晴らしい先生がいたとしても、たったひとりの“友達”には適わない…そのかわりはできないのですよ…」
…に、皆心を揺さぶられ、向かう方向がその時決まったのだと思います。

 今春、高校一年の長男が最後の卒業生…あれから、3年…
 閉校年、この地域には160名を超える小中学生がいましたが、今は120名をきり、当時の四分の三。そして、今年、統合先の小学校は開校以来初めての複式クラスが開級され…100名を切るのはすぐそこに…この5年間で三分の二に……
 言い知れぬ焦躁に、それでも正面を向き遺さなければならないものに汗を落としています。おそらく、局長がこの地におられた25年前も…今も…、その想いは受け継がれ変わるものはないのだと…また、そうでなければならないのだと思います。

《伝える生命の尊さ》
 さて、影の薄い中学校のPTA会長ですが、ようやく一学期が終了しようとしています。
 正直、今まではJA青年部のこともあり、PTA事業などは家内に任せきりにしていましたが、PTA会長になってあらためて子供達のこと、学校のこと、地域のこと、社会教育のこと…色々なことをその立場でないとわかり得ない視線で接し、新鮮な体験をしています。
 JA青年部の組織代表として「食農教育」を推進する立場のものとして汗を流していたこともあり、町の学校給食協議会の会合では、思い入れの大きい大変貴重な経験をしているところでした。

 平成13年、十勝地区農協青年部協議会の会長をつとめたとき、家内が学校給食モニターとなって給食指導の話を聞くことがありましたが、当時はO-157の影響で“おのこし”(残食)のことが話題となりました。開封していない牛乳も「お持ち帰り」はNGとの指導から、廃棄されていたのを“もったいない”との想いに議論がすすみ、これをうけて某校の給食指導をする立場の養護教諭が、
「なぜ牛乳を飲まなきゃならないのか?私も牛乳は嫌いなので、どう指導すればいいのでしょうか…?」
 に、憤然として…これをうけて若かった(未熟だった…?)私達が思ったのは…
「個人の嗜好は仕方ないものとして、そんな人を少なくともこの十勝の学校教育界に採用なんかしちゃダメ!」
と、いうものでした。
 実はこの事が、のちに私達JA青年部の「地産地消」に適う取り組みの源流になったことを、いま思い返したりしています。その年のJA青年部の十勝大会は独身の単組部長達が、
「でも、子供もいないし当事者じゃないんだけど…」
を、説得して分科会で学校給食をテーマに討論し、十勝管内の学校給食が「地産地消」の先進地であることを知るのです。ちなみに、「地産地消」や「食育・食農教育」、「スローフード」というフレーズは今ほど浸透していなかった頃でした…

 食料基地北海道…食料自給率はカロリーベースで180%とも言われていて、その中にあって『農業王国・十勝』はまさに我が国の食料庫です。管内の酪農家は3,000戸を割り、全国の主業農家の1%に満たないデイリーマン達が国内の生乳生産の10%を担っている『酪農王国』でもあります。いわば、“生命産業”を支える主産地です。
 もしも、新潟県はコシヒカリの産地で
「わたし、ご飯嫌いですから…」
…を、言う給食指導の教諭がいたとしたらどうなるでしょうか…?(村八分になる?)仮に能力に問題がなくともそもそも、そんな人を教員として採用するのが…、あるいはそんな先生に子供達が給食指導されているとしたら…それは、在るべき姿でしょうか?(越権ですね…失礼しました)

 少なくとも地域、故郷の産業理解は社会科教育の根幹ですし、郷土愛を育む土壌になるものです…それが食を通して、となれば我々の生命産業側のアプローチも貴重な意味と、なおさら重要になってくると思います。北海道であれば、なおのこと…。もちろん、私達の自己発信が今まで足りていなかったことを反省するのが先ですが…
 北海道農協青年部協議会(道青協)がこのことをベースに『子供農業体験事業』(H14からのプレ導入)を取り組んでいますが、子供達、その親御さん達に伝える“なにか”を青年部自らが学校におもむき“営業”することとあわせて、その隠れテーマとして“先生”に“なにを”伝えるか…は、そんなエピソードが発端になっています。
 “現場の先生”の農業理解がなさなければ「食育・食農教育」は正しく完成しません。さらには、先生方はいわば転勤族…色んな種を新しい畑に播種する役割も担っていると考えます。点が線に…その線が面に…そんな想いから取り組んでいるのがこの事業です。
 ちなみに一昨年、本事業にかかり管内JA更別青年部は地元小学校でトレーサビリティーを生産現場と教室の相方位で学習したことをまとめ活動実績大会で発表し、北海道、東北ブロックを代表して全国大会でも高く評価されました。
 機会があれば、そんなお話もさせていただければ…と、考えております。(厚かましいでしょうか…)

【…に相談だ!】
 自身も、知らないことばかりで時々見えない壁にぶつかることがあります。
 ついこの前も、指定ジャージで接触性の皮膚炎をおこした生徒と指定ジャージの在り方についてその対応を巡り、学校側のグソグソの態度と感度の悪さに
「だから、学校教育改革は進まないのですよ!一年で出来ることも、三年…三年で出来ることを五年かけてしまうからです!当事者の子供達は高校生になっているし、『難しい、慎重に…』を言っている当の先生は他校に転任してしまいます!そんなレスポンスだと民間ならつぶれます!」
と、吼えたものの(影、薄いはずじゃなかったのか…)ままならぬ周辺環境があるのも事実です…

 そんな時、ふと立ち返って一番大切なものは何かと見回すと自身の足元にあったり、すぐそばにいたりを気付くようになりました。
 この場合、『“子供達”はどう思っているのだろう…?』
 …ですし、もしこれが、防除のタイミングだったら『“作物”に聞いてみよう…』、その作物達も何となく元気がなかったら『“土”に相談してみよう…』、もちろん牛乳のことなら『“牛”に相談だ!』と、なるのでしょう。
 牛乳が白いのは、牛自らのカルシウム…牛の生命を削って搾りだされる“生命のしずく”は子供達の心と身体の明日を支え、私達農夫の汗の糧になるものです。
 お米が白いのも、小麦粉が白いのも、砂糖が、片栗粉が白いのも作物達によく“相談”して、食べてもらう人を思うたくさんの人達の手を介したから…まさに、生命の証なのです。

「牛乳は嫌い…」そんな言葉が口についてでる前に…
 牛に、草に、大地に、太陽に…そして、生命の育みに正面から向かい合う私達に“相談”して欲しいのですが…「子供農業体験事業」―恋愛相談以外なら(農業青年、恋愛経験値低くてシャイだからね〜)、きっと何か答えが見つかるはずです!

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