《新・新風青嵐の放談コラム‘07》青夏輝空の8月号

森羅の夢に果てるまで

「ドキュウメンタリーウィーク」

 こんな立場でも、たくさんの人達と色々な出会いがあったり…そんな、ご縁はどんなものでも大切にしたいと思っていますし、そういうものに育てられているのだな〜を実感すること多々…。たとえばお客様にお送りした野菜達が「美味しかったですよ〜」と、礼状などいただくと、何よりの励みと糧になっていたりします…

 さて、今夏…そんな思わぬご縁で、ある男の子が我が家にホームステイすることになるのですが…

【12日間〜心も身体も集中ダイエットプログラム/ベアキャンプ】
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7月30日 くもり
空こうにおばあちゃんとみづほがむかえにきてくれていた
よるハンバーグをつくった、ピーマンがとてもにがくてまずかった。
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 関西出身の小学6年、ランマくんは全校児童500人の児童会本部役員(児童会長っていないらしい…)をつとめるしっかりものの男の子…末娘と同学年でずいぶん大人びた感じです。ただし、野菜が大嫌い…スポーツも苦手…で、ちょっと小天狗。
 そんな子をなぜ受け入れるようになったかは、まさに色々なご縁がなせること…
 6月に先方の北海道家族旅行の際に当農園にこられて、野菜嫌いの件(それもかなりハード)は本人からも聞いていたのでそれなりの覚悟をしていましたが、ご両親とも食事やアレルギー、健康管理のことなど事前に情報を交換してついにその日がやってくるのです。
 関空からの一人旅、帯広空港で出迎えるのは私の母と末娘。時はまさに小麦収穫の最盛期…北海道畑作農家が最も畑作農家らしい…を、いわしめているそんな季節に関西弁まるだしの(あたりまえか…)コグマの様な体裁の彼は涼しくも熱い十勝の大地を踏みしめるのです。

 実は先方のお母様とのメールで、
「一番の心配は食事です。もちろん嫌いなものを無理矢理に…とは思っていませんが、だからといって特別扱いしませんから…」
を、お約束をしていましたし、本人にも理解してもらっていたのですが…
 このステイの間、では、せっかくだから日記をつけようね…と書かせた初日の内容が冒頭の2行です。
 家族勢揃いのオリエンテーションのあと、当農園レストランテ主任の中1の次女と緊急帰省の高2の長女とランマくん、楽しく仲良く3人でつくった夕食の手作りハンバーグ…主任のレシピには自家用の玉ねぎ、人参、ピーマンのみじん切りが混入されますが、やはりそれがお気に召さなかった様子…食べる前から
「おっ…おぇ〜!」
を連発し、しかも
「なんで、美味しいハンバーグ、わざわざこないにまずくつくるねん…おぇ〜」
我が家的に最高の出来映えのそのハンバーグをつくった主任のプライドをずたずたにするのでした…
 シロご飯は大好きとのことですが…やはり大苦戦を予感させる初日のハンバーグは、ソースをドボドボにしての様相にヒラリーいわく
「そないにしたら上手いものも、まずくなってしまうわ〜!」
 関西弁のコミュニケーションは楽しくて、それはそれで刺激的なのですが…

【日記チェック】
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7月31日 はれ
午後から人参のざっそうぬきをした めっちゃつかれた、でもかなり終わった、5分の4ぐらい終わった、よるにシャケをたべながら「エイリアン」を見た たのしかった。
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「あのねランマ、日記にはせめてその日の天気書いておこうね。それから2行以上書くこと。頑張ったこと、辛かったこと、楽しかったこと、そしてこの次の目標やテーマみたいな事、特にランマは嫌いな野菜を食べられることに挑戦してるんだから、どんなものがどれくらい食べられたかちゃんと書きなさい…」
先方のご家族にも見てもらう機会があるからと、キャンプ日記を書いてもらうことにしましたが、なんとなく面倒くさそう…でも、いちおう
「はぁ〜い」
と、素直ではあります。長男がたたみかけるように、
「それに、知っている漢字は使うこと〜」
 ちょっと小天狗で生意気な弟ランマくんも長男にとってはお気に入りだったようで、ランマくんも長男の言うことはよく聞いていたようでした。

「そういえば、先月会ったときより少しやせたんじゃない?」
のヒラリーの質問に、
「あんな、北海道に来ること決まってから、ご飯な、おかわりできへんようになったん…しかも、お茶碗小さなるし…」
に、家族一同爆笑…!
「育ち盛りなんだから、たくさん食べて帰ったらいいよ〜!」
長男、今春から寮生活でおもったものをおもったように食べられない苦労からか、ひもじい想いはさせたくない様子…
「ただし、必ず野菜は食べること!」
 その夜、サカナの中では唯一シャケが好物というのでおかずにだすと半分お残し…
「どうしてのこすの?鮭好きでしょ?」
「明日の朝のおかずにするねん…」
いじましい…が、だからといって野菜も食べなくてはいけないのですよ!

【一番楽しかったこと】
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8月1日 はれ
今日は7:20分におきて、あさにんじん(小)2つくったたまねぎ(中)1口くった、にんじん畑のざっそうぬきをがんばった、ひるはキャベツ(中)と(小)□←こんなんを一つづつたべたがんばった、ひるから「エイリアン」のつづきをみて、でかけた、「ジャガポックル」がなかった、ボウリングにいって、そのあと肉の食べほうだいにいった、ボウリングでは、ストライクをだした。
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キャンプ中、何が一番楽しかった?と、聞いたら
「ボウリングと焼き肉!」
と、こたえました。
「バイキングだから、好きなもの食べなさ〜い」
に、お肉をてんこ盛り…あとは、シロご飯。野菜はどうも食わず嫌いなところがあるようで、食べることに消極的な子供よりはいいかも知れませんが…食べられない理由をランマくんなりに言い訳します。
「なぜそんなに、野菜が嫌いなの?」
「ん〜、味ないやろー水だって味あるのに…」
おっ!なかなか言うな…に、長男が
「キャベツだってほとんどが水分だ!水の味がわかるなら、水だと思って食べろ!」

 この辺のやりとりは、なかなか興味深いものがありました。我が家の子供達に事前にハードな野菜嫌いな子を受け入れすることを通告すると、長男は
「あんね〜、特に食べ物は小学校あがる前に何とかなっていなかったら、何ともならないね…」
と、鋭いことを言います。
 それでも姉弟が増えたようで、楽しいレクリェーションはそれぞれのコミュニケーションを濃密にするのでした。
 それに、人参畑の抜草は大勢でやったので、それなりに達成感があったようです。これで
「あ〜、はらへった」
と、野菜をぱくついてくれたら作戦成功だったのですが…
「僕の辞書には“努力”と“我慢”っていう文字、ないねん!」
このキャンプ中、その辞書にどんな文字が登録されるか…お互いの奮闘は続くのです。

【ねこかぶりのばけのかわ】
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8月2日 はれのちくもりのちあめ
7:20分におきて、ソファーでうとうとしていた、あさめしは、しろめしだけだった、あさはえんどうをしゅうかくした、ひるめしは、しろめしだった、ひるは、いんげんのしゅうかくをした、よるめしは、しろめしとサンマだった、今日は一つもやさいをたべなくてすんでラッキーデーだった。
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8月3日 あめ
6:30におきて、なんかくばった。あさからはえんどうのしゅうかくをして、ひるはいんげんだった。ひるからはしょうぎをしていた。よるめしはカレーでカレーは、ほとんど一人でつくった。
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 このころから、北海道は本州の梅雨のような蒸し暑い曇雨天が続きます。小麦の収穫もなんとかセーフでしたが、夏野菜の収穫にダクダクの汗と雨に濡れながら、農園スタッフの一員として頑張るのです。
 早朝からのエンドウの収穫を終えて、ヒラリーが家にもどると娘たちが協力して朝食の準備をしています。そこにランマくんはソファーでグダラ〜としているところに小さいカミナリがおちます。
「あのね、ランマの朝食でもあるのよ!お皿をだすとか、箸をだすとか少し協力して頂戴!」
「はぁ〜い…」
「それからね、いつもは朝食を食べないようだけど、ここにいる間はダメ!なんか眠そうだけどちゃんと顔洗ってるの?」
「あらってへん…」
「ふだん、お家でも?」
「うん」
長男「そこからかぁ…!」
次女「ぎゃはははは…」
「あのね、ランマ!貴方はまず朝、起きたら顔を洗うこと!お家に帰ってもやって頂戴!お約束よ!」
「えー!…はぁ〜い」
 我が家の生活指導部もここにきて強敵であることを再認識するのでした。

「ランマ、明日ね朝6:30に起きて、みづほ(三女)と町内会に広報誌配ってきて〜」
 本年、輪番により町内会長なので、いわゆる町の配りものが月に2度あります。『なんかくばった』の“なんか”とはその町広報誌のこと。町内会の約半分のエリアを3件、自転車で往復2kmのミッションに…
「え〜!死ぬやん…それに6:30になんて起きられへん!」
(“死ぬやん”→基礎運動量が少ないのかそもそも自転車で何キロも…と言うのがありえないらしい…やたら“死ぬやん”を連発する)
「起きられないのなら、それはそれでしかたがないわ…でも、家族みんな色々と協力しながらやっているの!明日、ランマの朝一番のお手伝いはそれだから、責任を持って自分で起きて配ってきて!やる気のモンダイよ!」
「むりやて…」
 それでもその朝、自身で起きてミッション貫徹…きっと、同学年の三女の存在がいい刺激になっているのでしょう。
 今更ながら、“家族―生活―食事”は大切な三角形だと思いました。まず、家族の中にあっての存在意義(ちょっとおおげさかね?)、そして早起き(ほうっておくと昼までおネムだそう…)。これら生活習慣は食環境と密接に関わりを持つものだと考えますが…、ひら農園にとっても経験値をあげるうえで貴重なホームステイであることを、ポジティブに受けとめようとするのでした。

 傑作だったのがその日、夕食のカレー作り。
 もちろん自家用のジャガタマニンジンを材料にしたカレーを自分で作れば少しは食べてくれるかと思い、レストランテ主任の指導でキャッキャッ言いながら作ったカレーは、灰汁を取ったときに超みじん切りの玉ねぎも意図的に排除したようで、シンクの排水はタマネギで詰まってしまいヒラリーに大目玉!さすがに反省したようです。
 野菜を栽培する人、それを調理する人…そして食べる人…そこに何かを見いださないかぎり野菜嫌いを克服することは難しいと思っていたのですが、やはりそう簡単なことではないようです。

【人はそない簡単に死なんのや…】
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8月4日 雨(土)
今日は8:30分におきてかおを洗ってパンを食った、今日は外が雨だったので、家の中のそうじをした。ひるめしは、ふりかけごはんを食べた、うまかった、ひるからは「エイリアン」のとちゅうと「エイリアン2」をみた、よるは平さんのお見まいに行った、よるめしは、カレーだったとてもうまかった。
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8月5日 雲り(日)
今日7:20分におきて顔を洗った、あさめしはパンといなりずし中みはそばだった、けっこううまかった、あさからえんどうのしゅうかくをした、ひるめしはなっとうとごはんだった、おやつも食べた、ひるから はこづくりをした、あとビデオも見た、よるめしはロールキャベツだった、食べなかったからおこられた、でもあとから食った。
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 この、『野菜嫌い克服ブートキャンプ』(←なんかネームがバラバラ…)のハイライトはまさにこのあたり…ちょうど折り返しに差し掛かる頃でした。
 アキレス腱を切って入院している私のところに、お見舞に来るのですがヒラリー以下、我が家のレストランテスタッフは大苦戦。しかし、この立場から『生産(畑)−調理(キッチン)−食卓』の作戦はぶれずにやりきりたいし、『家族−生活―食事』のキーワードを介して、もうヒト押ししたいところ…
 看護婦さんも、“野菜嫌いのランマ君”の話は私や家族から伝え聞いていたので、偏食がいかに大変な病気を誘発するか…をコンコンと説教されての総攻撃に、ちょっとションボリモード…
 ちょうど、病院の夕食時間になり、
「今のランマなら、このメニューは耐えられへんやろー」
「ず〜っと、そないやと死ぬな…」(また死ぬか…)
に、ヒラリーが
「食べずにいたらず〜っと点滴…そのうち寝たきり、ウンチもシッコもベッドの上…つらいわね〜」
 入院棟の廊下からかいま見える病室の様子から、まさに説得力有りのリアルな状況に言葉を飲み込むランマくん…
 そこに、調理スタッフが来て
「どうですか?量、足りていますか?」
「はい、毎食美味しくいただいています、ありがとうございます。」

 食事が済んでから…
「あんなランマ…、あーして患者さんの状態や病気の具合を見ながら、一人一人の食事に気を使っているヒトがいるんや…もちろん、その食材を作るヒトもな。野菜嫌いはしゃ〜ないけど、『まずぃっ!』とか『死ぬやん…』とか不用意にゆうたらあかんよ…
 それに、人間そない簡単に死なへん!病院にいてたらわかるわ…『痛い、痛い、苦しい、苦しい』言いながら、それでも点滴うちながら生きとるんや〜それにな…そうやって亡くなったヒトは死んでからだって『痛い、苦しい…』が続くんやでぇ〜、そんなんイヤならちょっとでもええから野菜たべ!自分のためやで…」(なぜか関西弁になっちゃう)
ランマくんはコクリと頷きます。

 そして、次の日の夕食…
 やはり思うところがあって、少しずつでも食べる努力をしているランマくんでしたが、次女が作ったロールキャベツを手をつける前から
「おぇ…まずっ」
と、やったものだから、長女の堪忍袋の緒が切れて
「だったら、何も食べなくていいっ!」
と、全部(大好きなしろご飯も、箸も、お皿も…)片付けられてしまいました。

 ランマくん…目に涙(あ〜あ…とうとう泣かせっちゃたぁ…)

 家に帰ってきたヒラリーが長女から事情を聞き優しく諭します。
「あのねランマ…食べてもいないものに『おぇ…まずっ』は、ランマのことを思って作ってくれた人達を、あまりにも傷つけているわ…だって、このロールキャベツのレシピは『それなら食べられるかもしれへん』ってランマが言って、のどか(次女)が一生懸命作ったものよ。
意地悪や泣かせたくてこんなことしているんじゃないの…わかる?」
「はい…」

 ちょっと、しょっぱいロールキャベツでした…

【美味しいの笑顔】
*****
8月6日 晴れ(月)
7:20分におきて、パンととうふとレタスのみそしるをたべた、えんどうのしゅうかくをして、体験がきた、ひるからはえんどうをとって、そろばんにいって、よるめしはしろめしと、ギョーザとブロッコリーだった、そのあとはな火をして、そのあとビリーズブートキャンプをしてとてもへとへとになった。
*****

レタスの味噌汁は少しトリッキーなエピソードになりました。
「とうふの味噌汁なら食べれるかも…」
に、ヒラリー、豆腐の他にレタスをさく切りして味噌汁へ…どうするかとみていると、おわんのへりに食べずに並べます…
「ランマ…それはなに?食べもしないで…はダメだと言ったでしょ?それ、何かわかる?」
「…」
「少し食べてみて…それでそれが何かわかったらランマの野菜嫌いは認めるわ!」
もぐもぐもぐ…
「どう?まずい?なんだかわかる?」
「まずないけど…キャベツ?」
「ちがう」
「ハクサイ?」
「ちがう」
「ねぎ?」
「ちがう」
「…」
「わからない?でしょ!それはレタス…ランマは自分で何を食べているかわからないで、最初から嫌いなものだと思いこんで食べないだけなのよ!それではどんなものだって、食べたことにならないし、何も食べられないわ…そうでしょ?」
「…うん」
「じゃ〜、まず、とにかく食べるように努力しなさい!」
「はい…」
 ランマの辞書に“努力”と言う文字が登録されました。

*****
8月7日 晴れいっしゅん雨(火)
今日7:24分におきて、あさめしは、パンだった、あさからはえんどうのしゅうかくをした、とてもたいへんだった、ひるめしはなっとうごはんれいとうだった、ごはんがねちょねちょしていた、ひるからは、はこづくりをした、体けんのときに、子どもをさわろうととしたら、にげられてしっぱいした、よるめしはぶたどんだった、とってもおいしかった、ビリーズブートキャンプをしたきのうよりちょいきつだった。
*****
8月8日 雲りのち晴れ(水)
7:25分におきた、あさめしは、パンだった、あさからはえんどうをとった、ひるめしはなっとうだった、ひるからは、はこづくりだった、よるめしはハンバーグだったとてもうまかった、ビリーズブートキャンプをしてつかれた。
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8月9日 雨のち晴れ(木)
8:15分におきた、あさめしは、白いごはんにした、朝から大そうじをした、ひるめしはひじきいりなっとうごはんだった、うまかった、ひるからもそうじをして、本をよんだ、よるめしはヒレカツていしょくだった、そのあとびょういんにいった、そこでマンゴーあじのコンニャクゼリーを食べた、それと水ようかんと、ワッフルを食べた、今日もビリーズブートキャンプをした。 *****

 それでも、さすがにメニューには制限があったのでしょう…ランマくんはお手伝いも精力的でしたから食べないことで、体調を崩しては元も子もありませんでしたからキャンプ後半はしっかり食べきれる物…お肉系が多くなりました。
 ただ、ヒラリー実家の低温殺菌の牛乳は「おいしい!いつも飲んでるのと全然違う!」でしたし、ジャガイモのピザ風も、地元名店の餃子(ねぎ、にらたっぷり)も、笑顔で食べてくれることが増えてきたそうです。
 私は…といえば、病院のベッドの上…その、美味しい!のランマくんの笑顔を見ることが出来ないのが残念でならないのでした。

「あんな、ランマ…おじさんの仕事はみんなの生活には欠かすことが出来ない『食』や『潤い』を生産する現場の仕事なんや。…食べることは“生命”支えることで、その生命を糧にして僕らも生かしてもろうとるんよ…わかるか〜?」
「うん…、わかる」
「食べるってことは命をいただくことなんや…野菜も、お米も、お肉も、お魚もみ〜んな命でな、その命は大切なものやー!っていうのをランマやたくさんの人達にわかって欲しいから体験農園をうけいてるのや…ランマの父さんだってそういう事にごっつ汗かいてはるんやで…」
「ふ〜ん」
 私達の背中は、ランマくんに、子供達にどう映っているのでしょうか…

【また、必ず北に…】
*****
8月10日 雲り(金)
平おじさんへ
平家には、たいへんおせわになりました、
ありがとうございました。

平おばさんへ
おばさんのおかげでレタスを食べることができるようになりました。

みーたちへ
あそんでくれてありがとう。
やくそくごと
かおあらう
食器さげる
*****

 『約束事』はお家に帰ってからも、やらなくちゃ…を、約束させての(帰る日の朝、ヒラリーとけっこうもめたけど…)帯広空港へと帰路に…
 お別れの昼食をとりながら、
「そうだ!ランマ…この夏休みの経験を作文にして意見発表したら?」(わくわく…)
「校内意見発表?…もうきまってるねん!」
「あらそう…もう書いたの?」(段取りいいじゃんか〜)
「担任の先生かわったしな、去年の丸写しや…」
「えーっ!」(い、い、いいのかよぉ〜そんなんで)
「たしか、題名は『社会に対する少年の訴え』…だったかな〜先生に『文句ばっかり言い過ぎ!』ってしかられたわ」
「で…どんな内容だったのさ?」(おそるおそる…)
「学校給食がまずい…って内容!」
絶句…こりゃ大物だ!最後までしたたかなランマくんでした。

「また必ず、北海道に来るんだよ!」
「うん!冬休みにくるわ〜」
「元気でな…」
後も振り返らずに…

 先方のご両親に、無事返りましたの報告の追伸に、いずれキャンプ反省会を…
 ランマくんの足りていないところは、私達大人の足りていないところでもあると思うのですが…をサカナに「食農教育」を語りあかそう…と、思っています。

【星霜に】
 退院した翌日…
 地域の盆踊りプロデュースを終えての帰路は、手を伸ばせば届きそうな瞬く満天の星空…天の川を天頂に夏の大三角が、北の暑くて短い夏を惜しむかのように輝いています。
「こんなに綺麗な星空もこの夏初めてだな…」
しばらく、眺めていると大気圏の少し上を徘徊している人工衛星(UFOかも?)を尻目に、幾筋の流れ星が…
「あ!…流れ星!」
 いつの間にか、子供達が道路にシートを広げて即席の生プラネタリウム…流星観察会が始まりました。
「スゴ〜イ!あ…また!」
「ペルセウス流星群だよ…どんなお願いごとしようか…」
「お父さんのアキレス腱が早く治りますように…」(byヒラリー…子どもの前でもあるし、とりあえず無難なところを言ってみた…らしい)
「家族みんなが、笑顔でありますように…」(by三女…優しい末っ子)
「健ちゃんの腕が治りますように…」(by次女…同級生野球部のエースの右腕は剥離骨折だったらしい…)
「世界人類が平和でありますように…」(“平和の会”代表だからね〜)
ぎゃははははは〜なにそれー?無理だね〜世界なんて戦争だらけじゃん…
 言っているそばから流れ星が四方八方に…せめて、家庭内の危機管理能力だけでも上げなければ…

「ランマに見せてやりたかったね…」
「…いつか、見せてあげられますように…」
「この流れ星達を…大切な人が見ていますように…」

 …そして、大切な人達を見守ってくれますように…
 気まぐれな天空の星の神様は、はたしてこの夏の誰の願いを叶えてくれるでしょうか…

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