《新・新風青嵐の放談コラム‘07》美味癒惣の特別号

森羅の夢に果てるまで

「回天の浜辺で…」

10/28
 帯広空港におりると、気温はヒト桁台〜二日前の四国高知は夏の陽気…、前日の東京後泊は台風直撃…と、めまぐるしい季節の移り変わりを体験して、「四国・お遍路に癒されるリハビリの旅」を無事貫徹してきました〜
 プロダクトしていただいたのは、『21世紀の食卓を考える会』(H19コラム9月号)でお世話になったコープ札幌の某國井氏と、この出会いのきっかけを作っていただいた地元名士でキョウショクの某児玉氏。
 そして、ホストしていただいた高知は食品製造の某佐井社長には、二日間にわたり移動、視察とお忙しい中ご案内をしていただき素晴らしい体験が出来ました。
 また、何より北海道のエコファーマー・ファンでもある美人社長…惣菜屋の愛媛は新居浜の某藤田社長との再会を果たし、見るもの、触れるもの、感じるもの全てが新鮮で、刺激的な研修でした。

 〜視察研修の総括〜 濃密な晩秋の四日間

 おそらく“その時”龍馬も興奮に震えたであろう「桂浜」におりたって“日本”の夜明けを切り拓き、命を散らしていった若者達の群像に想いをはせる四国は『青年卒業』旅行を振り返ります。

【高知前夜】
 人生の夏休み…9月の出会い『21世紀の食卓を考える会』のおかげで四国研修のお話がトントン拍子ですすみ、甜菜の収穫は
「じゃ〜俺に任せておけーっ!」
と、すっかりロートリィから脱出した父におまかせして、前泊の東京入りは10/25(帯広からだと便があわなくて〜)

 9月のギブス上京(H19コラム9月号)で優しくしてくれた方々に、お約束の「白い恋人」は結局、製造再開が間に合わずそれでも柳月のレアスィートを仕込んで、快気の報告にと再会を果たすと大手町は京都美人の事務局女史が
「革靴、つらいのではありませんか〜?」
と、気遣ってくれて、しかもニセク○ッ○スのサンダルを買ってきてくれました。
 実はアキレス腱手術跡、醜く腫れてしまいカカトが革靴のイヤなところに当たり痛かったりします。それを察しての心遣いにただただ感謝…(本当になぜだか、北のエロファーマーに優しい事務局女史…和服が似合いそうな京都美人…)

 やはり東京のヒトは歩くのが速い…そんな速さにもがきながらアキレス腱は若干の不安を抱えながらも、それでもサンダルが気遣ってくれる人の思いをお守りにして、次日、視察団は羽田で合流〜南国は高知・龍馬空港に向けてとびたつのでした。

【ヨサコイと龍馬】
 26日Pm…龍馬空港におりたち、出迎えていただいたのは地元高知で調理用「タレ」を製造している、アピタ社の佐井社長。
ご挨拶するなり
「足、もうよろしいんですか?」
と、気遣っていただき、ギブスがはずれたらはずれたで痛々しい感じだったのでしょうか…恐縮してしまいました。
 ちなみに、調理用タレ…自身も実際に工場を見学するまでは想像もできませんでしたが、いわゆる「半製品」の惣菜キットの調理時につかう、例えば“肉ジャガ用”とか“酢豚用”とか…の「タレ」のこと。解る人にはわかるのでしょうが、実際見てみないと想像つかないのではないかと思いますが…

 その、佐井社長の案内で空港から一路四国を縦断する高速を北に…道中、高知らしいロケーションが飛び込んできて、自身の予習不足に焦ったりしていました。

 そう…高知はヨサコイの街。
 北の初夏の祭りに定着した「ヨサコイソーラン」の故郷…というか、きっと高知人にしてみたら「ヨサコイソーラン?あぁ…あの学芸会みたいなヤツね〜」と言われそう…北の者にしてみるとどう逆立ちしても、そういった文化性、歴史性の奥行きが府県のそれには敵わないと、コンプレックスを感じたりしていますがこればかりはどうすることもできません〜
 特に、芸能芸術は風土が育てるものですから、ある意味多民族で(「旧藩」からの開拓団を能動的に受け入れた…と言う意味での…)、マルチカルチャリズム(そんな大げさじゃないけど〜)な道民気質には、それを育むための“水”なり、“風”なり、“大地”なり“時間”が必要なのでしょうが…
 移植された苗が逞しく育つ時に…、今の私達が生かされていることを思わずにはいられないのでした。

 もうひとつは…龍馬の故郷。
 実は龍馬のサイレントフリークだったりしますが、まさかこんな時のこんな機会に土佐に来られるとは思いもしなかったので、沿道の車窓からみえる龍馬の看板が目に飛び込むたびに、「もっと…ちゃんと心の準備をしてから来れば良かった…」と、心がけの悪さを悔やんだりしていました。
 高速で高知をはなれるとき、佐井社長が
「龍馬が脱藩したルートはもう少し西になりますかね〜」
に、おもわず背中がゾクゾクしてしまいました。百数十年前…この山波を青年龍馬が駆け抜けたのかと…
 止まることを知らない“青年”の情熱は時代が変わっても、変わることはないのだと思いますが…だから、私もいま、龍馬の故郷にいるのかも…(青年→少なくとも本人はそう思っている→もう中年ホッチャレ〜しかもメタボ…)

【親切で、美味しくて、おしゃれ】
 高知から愛媛にはいり、少し遅い昼食のソバ屋さんには新居浜にある惣菜製造のクックチャム社、藤田社長(北海道ファンの美人社長〜)が満面の笑みでお出迎えしてくれました。
「本当に、よく来られましたね〜」
「はい、お言葉に甘えて…再会が果たせて嬉しいです。」

 そんなやりとりのあと、新ソバとボリューム満点のエビ天丼をたいらげて、むかうは藤田社長のクック・チャムはマザーキッチンの工場。
 この工場で製造される半製品の惣菜を、FCも会わせて約50店舗に配送…
 ちなみに会社は、ほとんどが女性ばかりで佐井社長いわく、
「視察、見学で男性の方受け入れるの藤田社長はあまり好まないようですよ…あなた達よほど気に入られましたね…」
 会議室のディスカッションで『ひら農園』のジャガイモが美味しかったことや、「メールの文章が上手ですわ…」などと誉めていただき(美人社長…ホメ上手…)すっかり舞い上がっての工場見学…見るもの、聞くもの全てに心が動かされるのでした。

 日も暮れ、懇親会は高知に向かう途中のクックチャムの路面店を視察。
 美味しそうなお総菜がバイキング形式でならび、お客様がひっきりなしに出来立てのおかずをトレーによそっていきます。
 ちなみに客単価は1000円〜。店内やお皿の盛りつけなどにも色々なこだわりとコーディネートがされているのを社員力を駆使して工夫しているのだとか…コンセプトは「親切で、美味しくて、おしゃれ」…納得!(まるで藤田社長みたい…)
 高知に向かう移動は藤田社長運転のベンツ…たぶん、女性の運転でベンツに乗せてもらうなんてこれが最初で最後なのかと思ったら、カチコチに緊張してしまいました。(アキレス腱もカチコチ)

 そんな、美人社長に「これからの経営戦略や、例えばどんなことしたいですか〜?」に、意外なこたえが…
「畑の真ん中に、ポツンとあるファームレストランしてみたいわ…農家のお母さん達と〜」
!!!!!
 藤田社長、女性の起業家を育てることを、ライフワークみたいに精力的に取り組んでいて、でも女性としても凄く魅力的な方です。
…北のJA女性部の大会や研修に、基調講演してもらえないかなぁ…
 触発されるお母さん達や、若妻…農村女性の中にはたくさんいると思うのだけれど〜

 可能性を秘めた新しい出会いは、多くの人達の笑顔につながるかも知れません。

【いやちや、しなちや、えいちや、いくちや】
 高知市内のホテルにチェックインして、佐井社長の案内で小料理屋「左」…もちろん、藤田社長もご一緒の懇親会。
 和やかに楽しい雰囲気でも、カウンターをはさんでの料理人との真剣勝負のような食事はひとつ一つの料理に心洗われる思い…“生鯨の刺身”“もどり鰹のタタキ”もダイナマイト級でしたが、ふるえてしまったのが“タマネギの浅漬け”と“抜き菜の梅肉和え”(抜き菜:大根の間引いたもの…大根菜の赤ちゃん)その鮮烈な味わいに、一瞬言葉を失いました!
 せっかくだからと、おいしい野菜料理に合う地酒をセレクトしてもらうと…
 でてきました〜!『船中八策』…男性らしい辛口の味わいもさることながら、そのネーミングに痺れてしまいます。

…『船中八策』…
 龍馬が起草した新国家体制の基本方針とされるもので、大政奉還論を進言するための上洛中の藩船洋上で土佐藩参政・後藤象二郎に対して提示したもの…“世界”をのぞんだ龍馬だからこそ想い得た政策的精神支柱です。

「人は…身分によってでなく、人格によって評価され…、身分によってでなく、それぞれの能力と努力によって…やりたい仕事に就け、人は…決して、故なき束縛、差別を受けず、理不尽に遭わず…、抱いた志…、夢が…権力によって踏みにじられ葬られることが、決してない世に…」
 幕府を倒す改革が、そういう世をつくるものでなくては、なんのための愚かな同じ人間同士の血の流し合いであったのか…
龍馬の叫びが聞こえてきそうです。

 素晴らしい料理にすっかり堪能して、藤田社長は1次会でお別れ…
 あとは、男同士の夜の街は南国美人が
「北海道〜!?それは遠いところから…」
と、どこも大歓迎でしかも盛り上がるのはやはり生殖学(生→性?)の話しで、仕込んできたのが高知女性版H4段活用〜
「いやちゃ…、しなちゃ…、えいちゃ…、いくちゃ…」
笑い転げていると
「でも、ひらさん…ちょっとM男君でしょ〜今夜、覚醒してあげる…」
あ!あ!あきませんて〜
 なんとか、辱めを受けずに回避するのですが〜(お守りのおかげかねぇ…ニセクロックスサンダル)さて、龍馬ならこんな時どうしたでしょう…

 ホテルに帰ると3時過ぎ!またまた、不良してしまいました〜

【カツオの真実】
10/27
 昨日までのぐずりぎみだった天気がウソのように晴れ渡り夏のような陽気。
 二日酔いの胃袋のケアもそこそこに、カツオのタタキを調理体験できる黒潮本陣へ…道中のロケーションはいかにも南国。収穫を終えた田圃の畦の脇には真っ赤なカンナが咲いていたり、黒い羽のチョウチョのような変わったトンボが飛んでいたり、芳香につい振り返ってしまう金木犀が満開だったり…
 以前、中国四国の青年部大会にお邪魔させていただいたときも思ったのですが、やはり南の川や山は北のそれと比べて生産的です。川には大きな魚影が橋の上からも確認できますし、大きな亀が甲羅干しをしていたり、沿道には野生の雉がいたりして…

 またまた、移動は藤田社長のベンツ〜(國井氏は佐井社長のお車で…)
 家族のこと、子どものこと、体験農園のこと、野菜作りのこと、食や教育のこと…
 地元、漬け物会社キョウショクの児玉氏と3人話が盛り上がっているうちに目的地へ到着。
 今が旬の“もどりカツオ”を藁であぶり、粗塩で…昨夜のアルコールが一気に融解する鮮烈な味わい!!!
 本物に触れて心が突き動かされることは、人生の真実を一つ体得したことになると思うのですが…、やはり良き食は心を奮い立たせ、豊かにし笑顔の源になるものです。皆さん、とても良い笑顔で召し上がっていました〜(たぶん、自分が一番食いしん坊だからニコニコだったのではないかと…)

 この後、スーパーのデリカブースなど消流視察。
 地物野菜のコーナーで見たことのない野菜達に興味をそそられますが、佐井社長、藤田社長、國井氏…途端にアキンドオーラがムンムンと〜
 今までの自身の視察と言えば、例えばホクレンや中央会がマネージメントしてくれて、いわば“産地の組織代表”という立場で研修をさせてもらうものでしたから、その“アキンド目線”には、唸るものがありました。
『あ…やはり、足りないものだらけだな…』
 でも…、なのに…、ワクワクしてしまうのはどうしてでしょうか〜?“青年卒業”旅行でも、まだ知識欲、学習欲がある証拠なのかもしれません。

【その想いがそこにある】
 スーパーの消流視察を終え、藤田社長とはここでお別れ。
「また、北海道にいらして下さい…そして、また、四国に来たいと思います。」
 握手する手に力を込め、再会の誓いをしてベンツを見送りました〜
(北の3人一見強面…しかも國井氏と児玉氏はスキンヘッド〜で、クマのような体裁で黒スーツ。←見ようによっては「姐さん!ありがとーございやしたっ!」的シチュエーション…?)

 このあと、佐井社長の案内で桂浜に…

 大老、井伊直弼が桜田門で勤王の志士に討たれる…桜田門外の変(万延元年3月)
…永き鎖国の代償は諸外国の不平等な開国の圧力に、幕府の権力も揺れ…であっても、250年の幕藩体制。その幕府の最高権力者が江戸城のすぐそばで一握りの浪士に討ち殺される…この当時考えられることではありませんでした…
 上士に虐げられ夢すら持てなかった土佐郷士の青年達はその報告を、後に土佐勤王党の党首になる武市半平太からうけ、安政の大獄の恨みを晴らしたとばかり体中の血を逆流させるのです。
「明日の日本を拓いていくのは、俺達なのだ!」
 その血気盛んな青年群像の中に、龍馬がいました…まさに維新回天を仲間と誓う浜辺…
−武田鉄也原作「お〜い!竜馬」桂浜のシーンから−

 実際のところ、正確な史実に基づいていたのかは論を持ちませんが、そんな想いが今から150年ほど前にそこにあったのは確かなことなのでしょう…
 実物を初めて見た黒潮を臨む龍馬の銅像が思いの外大きかったのは、制作者や龍馬を慕う人達の思いからなのだと、その浜辺に降り立ち、心がふるえ説明のつかない涙が溢れてとまらないのでした。
 浜を囲む松の老木はおそらくその生き証人…青年達の明日にかける宴も、生命を散らす多くの若者達の血吹雪もきっと見ていたに違いありません。
 そして、今の日本、私達…松の老木には、青年龍馬の魂にはどんな風に映っているのでしょうか?

 桂浜を胸一杯にしてはなれ、佐井社長のアピタ工場へ…
 近代的な工場内を見学させていただき、今まで柔和な社長の眼孔が一瞬鋭くなるのを全身に感じ会議室のディスカッション。
「これからは、“語り”のあるものでなければならないと思っています。でなければ、安ければなんだってイイの世界ですから…」
う〜ん…痺れました。
 この研修は、まさにこういった人達と巡り合うために、そして、この言葉に出会うための旅だったのだと猫背になりがちな背中をシャンとするのでした。
 四国が大好きになりました。

【人生の夏休み・大反省会】
 佐井社長に龍馬空港に送っていただき、再会をお約束する固い握手をして空港チェックイン…でも、関東直撃の台風はノーマーク。
 予定より一時間以上遅いテイクオフで東京後泊は、今夏『ひら農園』のホームページを作成してくれたワーキングステイの彼と、ギブスがはずれた報告とあらためてのお礼に…の、待ち合わせを一時間以上後に倒しての反省会。

彼「あらためてブログ読んでると、今までイメージしていた農家像が違って見えてきますよ…」
私「うん、でも、それぐらいのことしても、ままならないことの方が多かったりするさ〜」
←そう…甜菜の収穫最盛期に四国研修だなんて、考えられない人には考えられないだし…

彼「農家って人間らしい生き方ですよね〜職場復帰してなお思います。憧れますね…」
私「でも、住もうとは思わないけど、都会だって刺激的で魅力的だよ…」
←そう…日の出と共に起きて、日の入りと共に帰り家族と一緒に食事をする…人間らしいと言えば人間らしい…でも、夢や憧れだけじゃ食っていけないからね〜

彼「それに、野菜があんなに美味しいなんて…こっちじゃ絶対食べられませんよ!」
私「そりゃね…、鮮度も土づくりのこだわりも、気候風土も違うからね…それに、より美味しく思うのは君が君自身で収穫したからなんだよ!実はそれが美味しく食べるための大切な隠し味なんだ〜」
←そう…小学校の出張授業でよく言ってたっけな〜畑でつくるヒト、台所で調理するヒトがいることを思いだして…って〜

彼「コラムなんかに登場しちゃうと、なんか恥ずかしいけど、家族に自慢してるんです。」
私「ほんとうに…不思議な出会い…人生って不思議だよね〜」
←むしろ自慢できるのは私の方…貴方のような優秀な農園スタッフ(←勝手にスタッフにしちゃった〜)がいることだよ〜

 もし、アキレス腱を切らなかったら、巡り逢うことがなかった人達…

 冬をもうすぐそこにしてこの夏の大切な宝物を振り返る“青年卒業”の「四国・お遍路に癒されるリハビリの旅」は、次日(10/28)澄み渡る台風一過の青空に映える富士山を主翼の影にして羽田を飛び立つフライトで幕を閉じるのでした。

PS
 巡り合う大切な人達との再会の時…
 今度は農民画家「坂本 直行」さんの描く包装紙のお菓子をお土産にして、広い十勝に想いを巡らせてもらいましょうか…
 そう…、直行さんのお祖父様は龍馬の甥にあたり、今年は直行生誕100年…そして龍馬の没後140年…蝦夷地開拓の夢を実現することなく暗殺された龍馬と、生涯、龍馬の事を語らず農民として、画家として生きた直行の生き様に、これまた不思議な巡り合わせと脈々と伝わる志の符合に…“何か”を感じずにはいられません。

 人はその“何か”を探し、気付くために人生の旅を続けるのかも知れません…

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