《新・新風青嵐の放談コラム‘07》寒緩起村の2月号

森羅の夢に果てるまで

「愛町購買」

 中学校のPTA会長になってからの懸案のひとつに、子供達が着る学校の指定ジャージにかかる検討がありました。
 PTA話題から、愛町運動の思いつくところを放談っぽく…

【指定ジャージ、そろそろ変えられませんか?】
 そのきっかけは、今年の一年生に指定ジャージを原因とする接触性皮膚炎を発症した生徒がいて、ではこの機会に現行の指定ジャージを公正に評価し、新しいものにする、しないも含めて検討してみたら…というものでした。
 現行のジャージになったのは13年前。その価格、デザイン、耐久性、着心地、安全性を相対的に判断した上で、指定ジャージの在り方を検討しましょう…そういったことを話し合う検討委員会を設置することを昨年春のPTA合同役員会で約束していたのです。(もちろん、新しいジャージになったからといって、皮膚炎のリスクがゼロになるとは限りませんが…)

 ところが、手順を踏んでやってきたつもりでしたが、学校側の協力がなかなか得られず『指定ジャージ検討委員会』も三学期に入ってようやく立ち上がる始末。

〜だから、学校改革、教育改革は進まない!一年でできることを三年、三年でできることを五年かけてしまうから…答えのでるときには当事者は卒業していなくなってしまう…それでは、取り組む当事者の意欲を削いでしまうし、そんな情熱のない現場から良いものなんて生まれない、ましてや改革なんて進まない!〜

 ぐるぐると渦巻く心の叫びを飲み込んで、検討委員長に選任されて議事を進めるのですが、なぜかしら学校側が気にして止まないのは“指定店の抱える在庫をどうすればいいのでしょうか?”と、いうこと…
 なんと、町内の指定店は約五年分の在庫をストックしているとのことで、新ジャージに移行するにしても最低でも五年間の変更はままならない…(在庫は指定店が買い取っていて、その在庫がある程度無くなるまでは…)というのです。ちなみに、過去にも新ジャージ導入の話し合いがされていたようですが、同じ様な理由でいつの間にか立ち消えになっていたそうです。

 やはりこれには、PTA会員も憤懣の声、続出!
「また5年ですか?そこまでして、学校側がその業者の意向を汲まなくてはいけない理由はなんでしょうか?」
「すくなくとも、安心して着られるジャージじゃないのにねぇ…」
の声に学校側は…
「学校備品はだいたい、愛町購買を基本としているので…それに、これからのお付き合いのことも考えたら、あまりこじらせない方がいいかと…」
 さすがに、これには呆れてしまいます〜
「だって、五年たったら先生達だって転勤してこの学校にいないし、検討委員会に出ているメンバーだって在校していませんよ!無責任です!」
喧々囂々…

 実はこの検討委員会を立ち上げるのも、
「最初から『新ジャージの導入』を前提の検討は、業者の事情を考えて無理なので、もう少し時間をかけて議論することとしたい。」
の、学校側の申し入れに対しそんなグソグソの対応、認めることなんかできるか!…となって、お母さん達が自主的に検討委員会を立ち上げるところに来て、あわててようやく実現したものです。

〜こんな田舎の中学校で、わからずやの役人みたいな先生達と、非生産的な話し合いしていてなんなんだろう〜
…な、トホホ気分をなんとか奮い立たせてお母さん達にサポートしてもらうのでした。
 しかも、言うにことかいて“愛町購買”とは…
 もちろん、来月卒業をひかえる三年生の代表者には「関係ないし…」みたいなところもありますが、我が校の指定ジャージは“第2の制服”的役割があって、登下校はジャージ姿が一般的。ですから、よく地域の人の目にとまるので、そういった意味からも、有通無通をとわず指定ジャージの姿を考えることは少なからず、意義のある大事なことだと思うのです。

「…本当に大切なことを、よくかんがえていただきたい。子供達のための制服、ジャージであることをしっかり捉え、あるべき姿を大人達、学校が責任を持って考え示していく…そのための検討委員会であることをぐらつかせてはダメだと考えます…」
検討委員会の締めの挨拶を正面に見て、学校側はどんな想いでそれを聞いていたことでしょう。

【ネゴシエート】
 2月某日夜…
 その件について検討委員会を代表して教頭先生と事業者と交渉してきたのですが…

P会長「…その皮膚炎の件がきっかけとなって、検討委員会を設置し議論しました。色々と評価をしたうえで、もう13年間着てきた…できれば子供達ののぞむもの、PTAとすればより安全なものを求めるのは、心情として当然だと思います。
それを、在庫が五年分在るから〜と言う理由で我慢して五年間着なければならないのは、我慢できない…と、いうことなのですが、わかっていただけますか?」

それは、わかりますが…と、返答されたもののやはり釈然としないのでしょう…

××スポーツ店「ようするに、買いやすいところから買いたいと…地元の業者なんかどうなろうと知らないということですね?
それならそれでかまいませんが…学校や地域のこととして、今まではお付き合いしてきましたが、これからは寄付をお願いされても、他の方でどうぞと“にこっ”と笑ってお断りすればいいだけですからね…」

教頭「いっ、いっ、いえ…そこは、そのぉ…」(←教頭、ビビりすぎだよ)

P会長「誤解をなさらないで欲しいのは、これからはお付き合いしないとか、××スポーツ店をおとしめるだとか、そんな意図的なことはないということです。お互いのことを認識した上で公正に進めたいのです。
在庫の件も、PTAに責任が全くないかといえば、0%ではないでしょう…できるだけ在庫が残らないように、例えば2着目3着目の購入には、より割引をしていただいて即販する方法など、私達も検討委員会で話しあって提案させていただきたいと思います。」

××スポーツ店「そういうことでしたらご相談にはのりますが…」

P会長「それをふまえて、2〜3年内に新ジャージに移行したいというのが私達の希望です。どうか、ご理解下さい。」

【愛町運動の核…信頼と社会貢献】
 田舎の店舗事業者は大変です。シャッター街なんて揶揄されていますが、“時代の趨勢”…そんな言葉だけで片付けられない現状が、そこ此処に顕在化しています。
 地域の皆さんにお世話になっているから…で、社会貢献、社会奉仕を取り組む事業者の社会的責任が果たしうる環境は、やはりある程度の豊かさがバックステージになくてはならないのだと思います。

 ただ、“愛町購買”をいうのなら、そのベースは郷土愛であるべきですし、それを支えるものは濃密な人と人のふれあいが基礎だと思います。
 そもそも、サービスを提供する事業者であれば、たとえできること、できないことがあったとしても如何に『お客様』に満足していただけるか…そこから生まれる信頼関係こそが“愛町購買”の土壌となると思うのですが…

 ××スポーツ店のレジをはさんでの、大のオトナ達の“立ち”の交渉(どうぞ、おかけ下さい…っていうイスすらなかった〜)は、自身のお気に入りの友好色ネクタイのおかげでそれなりに何とかなったものの、立春を過ぎてなお、しばれる夜の冷気が店主のため息と共に、いっそう深く突き刺さる重たい夜になってしまいました。

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