《新・新風青嵐の放談コラム‘07》春陽青新の最終回号(その2)

森羅の夢に果てるまで

「羅針盤」

 前号に続いての最終回号…その2
 道青協の会長に就任して、全青協50周年事業を“作文”でしかけていったアレコレを振り返ります。

【作文に綴ること】
 平成16年春
 道青協会長に就任時に、副会長達や地区会長の皆さんに“私が会長になったからには…”の意気込みを、裏テーマにして三点にして伝えていくのでした。

 ひとつ目は、『作文が書けること』
 事業ごとの報告書やそれぞれの感想、所見…字面に落として自己整理をして“伝えること”の復習資材にしましょう〜さらには、そんなトレーニングから公式、非公式に関わらず書けることを理論武装の武器にしていきましょう〜作文ひとつで動かせる世界もある…

 ふたつ目は『より良いものを創っていく』
 安直に“昨年と一緒でいい”と、考えないようにしよう〜より良いものを創っていくためには色々なテストケースをふんで挑戦することが大切〜小さな失敗を恐れずに新しいものにチャレンジしていこう…

 みっつ目が『とにかく楽しくやろう』
 やんちゃ坊主の“言うわ、やるわ”は誉められるても叱責を受けないのが青年の特権…だからこそ青年らしく楽しくやろう〜苦しいことも辛いときもあるかも知れない…でも、だからこそ青年でなければ享受できない楽しさを仲間と共有し、互いを共鳴していこう…

 特に『作文が書けること』は、基本政策が検討される中にあって難しいところをコンコンとやってきました。
 たとえば、H16道青協策定の“基本農業政策確立に向けた提言”がまさにそれでした。一部には「難しすぎる…」との盟友からの声がありましたが、後に中央会はもちろん、霞ヶ関、道庁や永田町にもお繋ぎできて、北は担い手の政策議論のレベルの高さを今もって言わしめています。
 さらに、『より良いもの〜』、『楽しく〜』はグリーンホテルからパークホテルに会場を移した全道大会(H16年12月)に集約されると思っています。
 主催者の挨拶で“ちゃんとそのイスに座ってようね〜もう、お兄ちゃんなんだから…”のつもりの出席が、大恩ある石狩、後志を忘れてしまい、その後しばらくネタになっていたことや、大懇親会のステージで谷村氏、中原氏と肩組み合わせて主旋律も副旋律もグチャグチャにハモッタ“君と”は、とにかく『楽しく!』を実践した証で、そのノリは今も継承されているのだと思います。

【…は、ひとつ!】
 そしてこの年のハイライトは、全青協は50周年を迎えて、私は北海道・東北ブロックの理事を託され記念事業をおこしていくのですが、やはり難産だった『新綱領』の策定作業でした。
 実は新綱領、最初は“行動指針(アクションプラン)”的なものにとどめ、いわゆる5原則、綱領は遺していこう…という作業過程から、理事者でロジックしていくうちに“綱領”的になってしまって、だったら新綱領にしましょう〜と、いうのが内情。(“ヒラがこね、シラトリがつき綱領餅、フジキがまるめ喰うはミカミ”…放談コラムH17/10月号『道青協用語集』より)
 ところが、その辺のやりくりが上手く盟友に伝わっていきませんでした…特に、九州に〜
全青協が『では、いいですね?』と、了承をもらう段になっての10月の全国委員長で反対表明され、グソグソにしていくのですが…

〜以下、その時に反対県の委員長にあてたメッセージ(原文)です〜

『九州ブロック盟友に向けたメッセージ』

 九州の皆さんの熱い議論にただただ羨ましく、また精力的に新綱領に関し取り組まれていることを、遠い北海道の地から見守ることしかできないもどかしさをどう表現したらよいのか…。僚友に対しこのような形で応えることしか適わない現状を、正直、九州の皆さんはどう思っているのか…。メッセージに託すことに致しました。

 新綱領の策定にあたっては、すでに多くの既定事実がピン留めされており時計の針を後戻しすることはできないとの認識で理事会は統一されています。それは、多くの都道府県組織が肯定的、能動的に新綱領の策定を受け止めていることと、何より、新たなスタートラインを自らの手で創る意欲に満ちあふれているからです。
 しかし、全青協のマネージメントに手落ち、ぬかりがなかったかといえば決してそうではありません。少なくとも当事者として関わった私の知り得る部分だけをみても、前年度役員から本年度に引き継がれた時も(通常総会前)理事間の意見の相違はありましたし、“創り直す”、“新しい物を創る”といった言葉の表現だけが一人歩きをしてしまい、整理がされず多くの委員長、盟友に混乱を与えたのは事実です。経過のみを冷静にトレースしてもご指摘の通り、当初は『5原則・綱領はそのままで、行動指針を策定する。』といったものでありました。
 そのため鬼怒川会議の新綱領草案は納得できないものだったかもしれませんし、いかにして方向転換がなされたかの説明不足はあったかもしれません。結果的にこの時からボタンが掛け違えたまま今日まで来たことが、このような事態を招いてしまっていることを大きな憂慮をもってみています。議論を止めない確認をしたところであっても、決して九州の意見を軽視するとかの意図は無く、むしろその逆で『九州はひとつ』は『日本はひとつ』の核に成り得ることを他の都道府県の盟友も実感しています。
 もし、説明責任を果たしていないという指摘があるのだとしたら、通常総会から鬼怒川会議までの間の理事会(6/29・30、7/15・16)でのやりとりではないかと思います。本来であれば、三上会長か当事者である藤木副会長がその役目を果たすところではありますが、私なりの視点をもって整理すると以下のようになります。

6/29・30理事会
1 『5原則・綱領はそのままで、行動指針を策定する。』の整理でよいかどうか。
2 『5原則はそのままで、新綱領を策定する。』ただし現綱領については歴史性を伝え遺す。
3 新綱領の内容について『育成研究会』の報告を参考に策定する。
4 現綱領の性格と、行動計画を包含した『JAユース宣言(仮称)』のように標記する。(呼称区別)
5 以上を考慮し、次回(7/15・16理事会)までに各理事は策定案を提出する。
・なお、この時点で平私案が参考提出されている。

7/15・16理事会
1 各理事の策定案からコンセプトを絞り込み、アウトラインを決定した。
※九州については各県委員長の策定による“ブロック案”という形で提示された。
2 『JAユース宣言(仮称)』のスタイルをイメージして文章をロジックした。(以下草案と表現)
3 草案の完成をみて、現綱領と行動計画のみならず、5原則を包含した内容の策定に至った。
4 草案の明確なポジションを考えるとき、5原則・現綱領との関係を整理するための議論におよぶ。
※整理として5原則・現綱領について歴史性と不変性については認めるも、その精神支柱は草案に応分に包含されており、遺すことで混乱が生じないかを懸念。
※草案は、新たな一歩を踏み出すのにふさわしい内容を包括しているものであり、特に50年前にない新たなコンセプトを配したことは、時代の要求に応える“青年らしさ”が自己評価できる。
※よって、5原則・現綱領については我々の手によりその価値を新綱領で継承することで、歴史的価値を終焉させ、新たな出発を自ら課すことに重点をおき策定作業を推進することを確認した。
5 『JAユース宣言(仮称)』から『JA青年組織綱領』の呼称に変更する。
6 草案をベースに“新たな”綱領に関する組織討議を実施する事を確認。
・このことにおよぶ経過説明を鬼怒川会議にて行い、県委員長の了承をいただくことを前提に組織討議、意見集約を進めることを確認した。
(内容についてあくまでも私見でありますが、平私案、白鳥私案の作文をベースに九州ブロック案が強力にその骨格を形成していった印象を受けます。)

 結果として新たな綱領に、5原則、現綱領の精神のほかに組み入れたコンテンツは『育成研究会』の報告項目と整合され以下の5点です。(条文化したもの)
1 地域社会への貢献…貴重な農環境を守り産業としての自立と地域の期待に応える
 ・農業、農村に対して、社会からの期待に応える地域創造と、環境を守り、風土文化を育み、社会教育に積極的に関わる事の意義をまとめた。
 ・5原則、現綱領で言うところの、『村づくり運動の前衛隊』、『理想農村を建設する。』を包括し、更に発展させたソースを提唱した。
2 責任ある政策提言…国民、生活者、消費者を巻き込んだ世論形成を図る
 ・国民との相互理解を推進し(誰に向けてアピールするプレーなのか)食と農の真価を確立するために、批判のための批判ではない責任ある政策提言を行う事をまとめた。
 ・5原則、現綱領で言うところの、『農業、農民に対する諸政策について〜積極的に…。』、『民主的農業政策の確立』を包括し、“国民との連携”をリンクし提唱した。
3 JA運営の参画…JA運動をリードしJAと対等である当事者として事業運営に取り組む。
 ・JA運動の根幹とは協同の精神。それは力、知恵、心を合わせ取り組むこと。JAイコール私達であることを、事業運営に主体的に取り組む方策で実現することをまとめた。
 ・5原則、現綱領で言うところの、『実践的批判者』、『農協運動の先駆者』から発展させ、主人公、あるいはメインキャストの位置を提唱した。
4 相互の研鑽の場…新たな出会いを大きな可能性にし、自身を鍛える組織活動の在り方
 ・組織活動に参加する大きな動議付けが自身の営農、経営技術の向上である。我々は単に仲間・同士であることの他に、互いを鍛える良質なライバルであることを意識する。
 ・5原則で言うところの、『挺身しようとする〜同士的結合』に表現しきれない未来のあるべき青年部の盟友同士の関係を提唱した。
5 担い手の育成…我々は担い手であると同時に次代の担い手を育成する役割を有している。
 ・後継者不足は、農家自身が生み出した問題でもある。なぜなら、自らの希望ある農業の将来を語る資質に欠けているからだ。あすの担い手を育成する役割を自覚しなければならない。
 ・5原則、現綱領では該当する文章は見あたらない組織活動の価値とその達成感を実感できる人材育成を提唱した。

以上のようにまとめることができます。
 なお、『育成研究会』は当時の青年部盟友、現役役員なども構成員になっており、“知らない誰かの無責任な議論”の批判はこれに当たりません

 ここで私が見えてこないのが、ひとつとして、草案の骨格に九州ブロック案が反映されていることに九州の各県委員長はどの様な感想をお持ちなのか。むしろ議論をリードしてきたのは九州の盟友であったように思われますが、今時において議論をリセットされたいとの主旨は、自身で積み木を組み立てておいて、気に入らないからと言って崩しているとしか対外的に受け止めてはくれないのではないかと感じます。まず、この点について公的な見解が求められるものです。
 ふたつめに、鬼怒川会議から『組織の在り方・方向性』の議論を同時並行にされている組織討議では、全青協理事の年齢要件、慰労金の引き上げなどで全青協原案と相異していたところが特に、神経質でデリケートな部分であったがために、かける必要のないフィルターがかかってしまっていないかということです。本来、本件とは例えリンクするものであっても、議論のテーブルは別です。混同されている部分がないのか、その点を冷静に判断していただきたいと考えます。

 先に、全青協理事の年齢要件について解説を入れれば、本件はあくまで“全青協理事”の年齢要件に言及するものであって、県、単組の役員盟友の定年を示唆しているものではないということ。
 現時点で全青協会長、副会長が39歳11ヶ月の要件で、理事においてその制限がないのは例え県、ブロックの実状があるにせよ整合性が図られないことと、渉外事業において少なからず不具合が生じている実態を改善することを目的としているものです。
 少なくとも、組織内の代謝は“青年部”という性格からして必要であることは最低限認識されているものと考えています。ただし、意見集約から実行可能な最大公約数が“40歳未満”では無いことは結果として示されるものであり、“概ね40歳”が着陸点になると判断します。いずれにせよ、全青協理事の年齢について要件化することを組織の活性化に繋げていかなければならないのは確かです。
 次に、役員慰労金の引き上げについてですが、本来この件は“組織強化対策委員会”など第三者機関ないしは当事者でないものが“答申”するものが正規ではないかと考えますが、現状の改善に緊急を要したと判断しました。
 なぜなら、全青協会長・副会長の業務負担が極端に突出しており、誰でもが出来ることではないことはもちろんですが、責任感と意欲、期待の大きい者ほど自己犠牲(家族や自己の経営)が大きくなることを最大限に軽減される方策として、報酬増額ありきの議論でなく役員の業務を評価した結果としての提案であることを整理していただきたい。もちろん、貴重な原資であることを最低限認識されていることを前提としたものです。
 『貰えるだけ、まだ良し。』とか『名誉職なのだから必要がない。』の意見にはいったい何処の何を観て発言をされているのか、討議によりこの溝を埋めていかなければならないし、あえて言えば、慰労金が欲しいから役員を務めているとか、だから値上げして欲しいといった順番ではないということです。

 さて、新綱領についてですが、ここからは道青協会長、全青協理事の立場に関係なく、あくまで一盟友としての意見を整理します。

『末端からは突然の話
盟友からの自己発生的な声を聞いてから…』
 各県の組織討議には様々な意見がありましたが、逆に求めているものの大きさを証明した事にならないでしょうか。無関心であればこれほどの議論はなされないはずです。
 もし、5年前に同じ組織討議をかけていたらこれほどまでになっていたでしょうか。そういう意味からも、今がタイミングです。作物の種も播種のタイミングを失すれば発芽しません。

自然災害で議論どころではない。優先し取り組むべき事があるはずだ。』
 全青協として決して自然災害の復興にかかる取り組みに、無関心であったわけではないのです。効果的な独自の支援策を確立することはシステムマッチクの問題であり、そのことと新綱領策定の議論を混同してはいけないのではないかと思います。心情としては理解できますが未曾有の台風被害を受けた地区から責任ある提言をいただいた場面も少なくありません。
 また、それこそより現場に近い声をフィードバックさせる工夫を役員の皆さんがやってこられたか。青年部の役員はトップリードしていく指導性、求心性と合わせて、自らが懸案を咀嚼し現場に伝えていく役割を有していると考えます。そのための意見誘導、理論誘導などそういった工夫こそが取り組むべき優先課題ではないでしょうか。

『5原則の要素が入っているのなら作り替える意味がないのではないか?』
『時間をかけ議論しては…』
 加速する構造改革、JA改革の中で青年部の存在意義を示した50年前の“作文”に、執着するのにどれだけの意味があるのか。少なくとも現状に満足できていないことに正面から取り組むべきです。そのためにいたずらに議論を延ばさず、結果を求めることに貪欲であるべきだと考えます。
 新綱領は出来たからそれでお終りというものでなく、むしろ出来てからがスタートです。50年前の5原則、綱領も浸透するのにそれなりの時間を有し、そうした時代の1ページを綴る作業をこの時代の当事者である我々が行うこと、積み残しを軽減し次代を担う者に託すことを最大の動議付けにしなければいけないのではないかと思います。
 変換期に伴うアレルギー反応は大小あります。最大公約数的な表現も組織の性格上致し方ないかもしれません。しかし、多分50年前のフリーハンドで制定された5原則も、その後策定された統一綱領も、始から全ての盟友に受け入れられていたか…。おそらくは様々な視点があり、だからこそ後段、解釈文が用意されたのでしょう。
 新綱領もそのフレーズに精神を注入していくのに数年かかりますが、それはそれでやりがいを感じないでしょうか。新しい時代を創るよろこびを、能動的に受け止める青年らしい魂を、先人、先輩達から託されている自分たちを楽しめる余裕がほしいと思います。

 もし、私が5原則を考えた当事者でこの議論の渦中にいたなら、50年も使い仕切る現役の盟友に対し感謝する半分で、
自分たちの頭と、腕と、言葉で新しいものを創れないのか。これにこだわり、ぶら下がっているうちは絶対50年前の俺達を越えることはできない。農業青年は50年間進化できていない…、“だから百姓は駄目なんだ”と自らの能力の無さを自ら認めてしまうことになるんだぞ。』
と、思ってしまうし言ってしまうかもしれません。
 少なくとも私達はそれでも“修正案”までは創れるだけの能力を兼ね備えています。そのことを前進する力に代えることを信じたいです。

 これが今、私の皆さんに伝え得るメッセージの全てです。お節介かもしれませんが、しかし黙ってみていることができません。九州の県委員長、盟友の皆さんの明日に踏み出す勇気と、情熱を持ち続けることを弛まないその力を、青年部の推進力になりますことを願って止みません。

【Originate…時代を創る】
 …この議論で埋もれてしまい、結果的に日の目を見なかった“ヒラ私案第2考”は、策定作業にご一緒させて頂いた某コピーライターさんに絶賛されました。懐かしくも、埃にうもれたままホルダーにしまっておくのはなんだか可愛そうに思えてしまい、コラム初披露〜

《題》JA青年部
《本文》
1,Cultivate /私たちは恵の大地を耕します
 豊かな列島の風土から、多様な食文化が育まれ享受される事を再認識すると共に、その環境の保全に関わる我々の存在意義を広く発信し、自らが大地を耕し創生する。

2,Originate /私たちは時代を創造します
 希望ある未来農業を拓く気概を持ち、改革を断行する先達として、時流に流されず確固たる理念を追求し、『農』と『食』の将来の在るべき姿を構築する。

3,Making /私たちはより愛されるものを生産します
 豊かな食卓を担い、消費者により愛される農畜産物を、安定的に供給することが農業者の使命であることを、国民と共有し対流を推進する。

4,Partnership /私たちは仲間との連携を強化します
 相互の研鑽と議論修養を図ると共に、組織活動を通じて盟友のみならず、多くの若者、消費者との連帯を深め産業振興の取り組みを強化する。

5,Action /私たちは責任ある行動をします
 確度の高い農業政策の実現に向けJA運営や行政、政治に関心を持ち、それを語る資質を議論修養し、自主自立のための結集を実践する。

6,Studying /私たちは学習、研修に積極的に取り組みます
 地域の営農技術を先導する牽引者としての役割を自覚し、生産振興の基礎となる学習、研修活動をとおし組織活動の意義を認識する。

7,Support /私たちは地域社会を支えます
 豊かな郷土と文化の育みを地域創造の根幹とし、地域に期待される担い手という責任ある立場から社会貢献に適う人材を育成する。

 “羅針盤”をコンパスと読ませて、アルファベットで綴る…自身はこれでもけっこうイケテる〜と、思っていましたが、やはり毛色が違っていました。

 羅針盤の示す針は“示される”のではなく、“示していく”もの…
 この年…そんな作文ばかりを書いていたのでした。

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